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『裏取り』ってなに?

ブログでジュエリーをご紹介する際に時々『裏取り』という言葉を使っていますが、裏取りってそもそも「何?どれ?」と言われることもありますので今回は裏取りについてのブログです。
ダイヤや透明な宝石をプラチナや金の台に埋め込む際、ドリルで穴をあけてそこに宝石をセットします。
すると、宝石が貴金属に埋まってしまうことで宝石に光が入りにくくなり本来の輝きが損なわれてしまうことがあります。

そこで、ドリルで穴をあける際に貴金属の裏側まで穴をあけることができる場合、貫通させて穴を裏側まであけるようにします。そうすることで裏側からも光を取り込み宝石本来が持っている輝きを引き出してあげることができます。
ただ、小さな穴があいているだけでは光を十分に取り入れることができないため、その穴を美しさと強度を損なわない範囲で大きく広げて光を取り込みやすくすること(技法)を『裏取り』もしくは『アジュール(ajour)』と呼びます。

文章だけではわかりにくいので画像を用意いたしました。
折角なので裏取り作業の工程も合わせて解説いたします。

一般的にはリングにダイヤなどが留まっている場合、裏側はこのように丸い穴があいていると思います。

裏取りなし画像

このままでは光が入りにくいですし、何より裏から宝石があまり見えないので穴を加工して少し大きくします。

解りやすくするため別の板を用意いたしました。
宝石をセットするためにあけた穴の裏側(リング内側)だと思ってください。
裏取り工程1<写真左>
穴をあけたところ
<写真中央>
穴の周りに目安になるケガキの線を入れます。
<写真右>
丸穴に糸鋸を通して4隅に向かって切り込みを入れます。

するとこうなります。
裏取り工程2

次に残っている面を同じく糸鋸を使って削りとった後、極小のヤスリを使って面を整えます。
裏取り工程3<写真左>
矢印の箇所が糸鋸で一か所削ったところ。
<写真中央>
鋸で4面削ったところ
<写真右>
ヤスリで面を整えているところ

ヤスリで面を整えるとこうなります。

裏取り工程4このままでは穴は大きくなりましたが、光ってないのでヤスリの面に『鏡面仕上げ』を施します。

裏取り工程5<写真左>
超硬素材でできた金属棒をヤスリ面にあててヤスリ目を潰しつつ面を整えます。
<写真右>
穴の中に研磨剤をつけた糸を通しゴシゴシと面を磨きます。
この作業は「糸磨き」と呼ばれており原始的な作業ですが、研磨工具などが入らない細かな場所も磨くことができます。
ブランドごとに使う糸や研磨剤の種類も様々で企業秘密もきっとたくさんあるのではないかと思います。

そしてこちらが研磨が終わったところです。四角くあけた穴の中も光っています。
(左側が裏取りしたもの、右側は比較のために丸穴のみ)
裏取り完成
裏取りを施してから宝石をセットしますと、宝石に光も入りますし宝石の裏側まで見ることができる上、穴の中まで光っていることで非常に美しく感じていただけることと思います。

ダイヤモンドをセットして、裏側から裏取り「あり」と「無し」で比べるとこんな感じです。
(ダイヤモンド直径1.4㎜)
裏取り比較_01
裏取りを施していると裏から見た時にダイヤがしっかり見える上、壁面にダイヤのカットが映り込んでキラキラします。

そして初めの写真のリングに裏取りを施して裏から見るとこのような感じになります。
(穴の形状は四角ではなく木の葉型に抜いております)リングの裏側(裏取り)
しっかりと撮影しますとこのように見ていただけます。
ハーフエタニティring裏側穴の形状は四角に抜く場合もありますし、このような木の葉型に抜くこともあります。
作品に合わせて裏取りの形状は様々で、ジュエリーとしてより美しくなることを目指して施されます。
これらが『裏取り』と呼ばれる技法になります。

ハーフエタニティリングのページはこちら

ハーフエタニティの魅力

ハーフエタニティ彫留め

展示会を前にまた一本ハーフエタニティリングが完成しました。
この何とも言えないスマートなリングが好きでつい細部までこだわって作りこんでしまいます。
シンプルなリングなのに作り込むところがあるのかと思われるかもしれませんが、シンプルというのは余計なものをすべて削ぎ落とし、魅力のある部分だけを残して出来上がったものですので、こういったデザインでは僅かな気の緩みが仕上がりを左右してしまいます。
リング幅に最適な大きさのダイヤモンドを選び、プラチナリングに等間隔に埋め込んでいきます。
そうするとダイヤモンドをセットした穴が裏側に丸く空くのですが、そのままではあまりにも味気ないですのでその丸穴にも細工を施していきます。

ヘーフエタニティの裏取り

いろいろな形に細工できるのですが、私はこの流れるような柔らかな雰囲気が好きなので丸穴を『木の葉型』に加工いたしました。
さらに穴の中を磨き上げることで、明るく輝き裏から見てもダイヤの美しさがより際立ちます。
せっかくダイヤモンドを埋め込んでいるのですから、表から見るだけではもったいないですよね。
この穴加工のことを「裏どり」といい、良質なアンティークジュエリーでは時々目にします。
美術館などでティアラなど展示されていましたら、ぜひ側面や裏側からもそっと覗いてみてください。
きっと同じような加工が施されていますよ☆

・ハーフエタニティリングのページはこちら

・こちらの店舗で手にとってご覧いただけます。
九州 ジュエリーミーテ
関西 仲庭(現在仮店舗)

新作を制作中

私共のアトリエでは年に数回の展示会しかおこなっていないものですから、なかなか皆さんのお目に触れる機会が少ないかも知れません。
ですが、常に新作は作り続けております。
一点一点制作を行なっておりますので、作品数は多くないのですがそれで良い思っております。
大事に作り上げた作品たちだからこそ物語も生まれます。

ただ、見た目に綺麗だというだけでなく、しっかり細部まで磨きこまれジュエリーとして長く愛していただけるそういった作品たちだけを作ろうと思っております。
裏取りの仕上げ中
木綿糸に研磨剤を付け、通常仕上げができないような細部まで磨きこんでいきます。
そうすることで輝きが増すだけでなく、より洗練られたものに仕上がっていきます。

現在制作しております新作たちは2013年2月にお披露目をさせて頂く予定です。
何点出来上がるかわかりませんが、きっと数点の新作になると思います。
たったの数点?と思われるかも知れませんが、しっかりと作りこまれたものはたったの数点しか作れないのです。
どうぞ完成をご期待くださいませ。

裏取りを淡々と

ハーフエタニティ裏取り(糸鋸) ハーフエタニティ裏取り(糸磨き)

先日から作り続けております、 ハーフエタニティリングの制作中の写真です(携帯の写真ですのでピントがあっておりませんがお許しを)。
どの作品も好きなのですが、このリングは作りながら綺麗だなぁと自画自賛しながら作っております(笑)

「ただのハーフエタニティのリングでしょ」と、思う方もおられるとおもいますが・・・。
そうです。ただのハーフエタニティのリングなのです。
でも、直感的に綺麗だと思えるのです。
それって単純ですがとっても大事なことだと思うのです。

<展示会のお知らせ>
作品達は「三越ジャパンセンスィーズ」にてご覧いただけます。

<会期>2011年11月9日(水)~22日(火)

<場所>日本橋三越本店 6階 宝石サロン
<時間>10:00~19:00