HIROUMIアーカイブコレクション

現在HIROUMIのウェブサイトのトップに使用しております画像は、お客さまのリングをリモデルさせていただいたものでございます。

デザインをいくつかご提案しましたところ、特にHIROUMIらしいものをご希望ということで改めてご提案させていただいたのが、HIROUMIアーカイブコレクションの中の逸品で、アトリエヒロウミの初代が残していた初代が手掛けた作品の石膏の型を元に現代的にアレンジしたものです。
当時は写真の技術が今ほど優れておりませんので、作品のイメージを残すために石膏で型を取って立体として残していたようです。(※型と言いましても形状を残すためだけの物であり、原型及び量産化できるものではございません)

HIROUMIアーカイブ1s

リボンが巻き付いているようなデザインで、アシンメトリーの曲線が絡み合うとても複雑な構造です。

現代では大量生産に限らず、逸品もののジュエリーでも複雑な立体を制作する場合、ワックス(ロウ状のもの)を削って原型を作り鋳造する場合があります。
私共でも、その制作方法がそのジュエリーにとって最も完成度の高い作品となるなら、その手段を選ぶ場合もあります。
そのためだけに自社で鋳造機も備えています。

ただ、今回のリングは、初代が機械的な工具を使っていない時代に、地金を熱し、叩き、延ばし、鋸で切って、ヤットコで曲げて、一つ一つのパーツを形作り、組み上げて作り上げた初代の技能を検証する意味もあって、すべてを同じように手作りで作り上げました。
また、その時代に生まれたデザインだということもあって、リボンが複雑に組み合わさりそこにDiamondをセッティングし、裏取りを施し、細部まで磨き上げ立体的に組み立てようと思えば、、やはり今の時代でも手作りで作ることが最も良い手法のようにも思います。

アーカイブコレクションにどんなスタイルのジュエリーの石膏型が残されていても、実際に自分の手で作らなくては、『受け継がれている』ことにはならないと感じております。
三代目が生まれる前に作られたものですし、どのように作られているかは職人の経験からの想像を働かせ、今の時代において最上と思う手法を駆使しております。
リングの裏も見えるように、回転させながら動画を撮影しました。
(画面右下の歯車マークよりお好みの画質を選択してください)

リングの左右に組み上げ、絡みついたリボン状のダイヤの帯の裏まで裏抜きをし、磨き上げています。ですから、ボリュームある見た目よりずっと軽く仕上がりました。

完成した姿は今見てもとてもモダンなデザインです。
このモダンなリングを作っていた初代の仕事ぶりを見るにつけ、今の時代を担う者として次世代に残すジュエリーを常に意識して制作の励みにしております。

『裏取り』ってなに?

ブログでジュエリーをご紹介する際に時々『裏取り』という言葉を使っていますが、裏取りってそもそも「何?どれ?」と言われることもありますので今回は裏取りについてのブログです。
ダイヤや透明な宝石をプラチナや金の台に埋め込む際、ドリルで穴をあけてそこに宝石をセットします。
すると、宝石が貴金属に埋まってしまうことで宝石に光が入りにくくなり本来の輝きが損なわれてしまうことがあります。

そこで、ドリルで穴をあける際に貴金属の裏側まで穴をあけることができる場合、貫通させて穴を裏側まであけるようにします。そうすることで裏側からも光を取り込み宝石本来が持っている輝きを引き出してあげることができます。
ただ、小さな穴があいているだけでは光を十分に取り入れることができないため、その穴を美しさと強度を損なわない範囲で大きく広げて光を取り込みやすくすること(技法)を『裏取り』もしくは『アジュール(ajour)』と呼びます。

文章だけではわかりにくいので画像を用意いたしました。
折角なので裏取り作業の工程も合わせて解説いたします。

一般的にはリングにダイヤなどが留まっている場合、裏側はこのように丸い穴があいていると思います。

裏取りなし画像

このままでは光が入りにくいですし、何より裏から宝石があまり見えないので穴を加工して少し大きくします。

解りやすくするため別の板を用意いたしました。
宝石をセットするためにあけた穴の裏側(リング内側)だと思ってください。
裏取り工程1<写真左>
穴をあけたところ
<写真中央>
穴の周りに目安になるケガキの線を入れます。
<写真右>
丸穴に糸鋸を通して4隅に向かって切り込みを入れます。

するとこうなります。
裏取り工程2

次に残っている面を同じく糸鋸を使って削りとった後、極小のヤスリを使って面を整えます。
裏取り工程3<写真左>
矢印の箇所が糸鋸で一か所削ったところ。
<写真中央>
鋸で4面削ったところ
<写真右>
ヤスリで面を整えているところ

ヤスリで面を整えるとこうなります。

裏取り工程4このままでは穴は大きくなりましたが、光ってないのでヤスリの面に『鏡面仕上げ』を施します。

裏取り工程5<写真左>
超硬素材でできた金属棒をヤスリ面にあててヤスリ目を潰しつつ面を整えます。
<写真右>
穴の中に研磨剤をつけた糸を通しゴシゴシと面を磨きます。
この作業は「糸磨き」と呼ばれており原始的な作業ですが、研磨工具などが入らない細かな場所も磨くことができます。
ブランドごとに使う糸や研磨剤の種類も様々で企業秘密もきっとたくさんあるのではないかと思います。

そしてこちらが研磨が終わったところです。四角くあけた穴の中も光っています。
(左側が裏取りしたもの、右側は比較のために丸穴のみ)
裏取り完成
裏取りを施してから宝石をセットしますと、宝石に光も入りますし宝石の裏側まで見ることができる上、穴の中まで光っていることで非常に美しく感じていただけることと思います。

ダイヤモンドをセットして、裏側から裏取り「あり」と「無し」で比べるとこんな感じです。
(ダイヤモンド直径1.4㎜)
裏取り比較_01
裏取りを施していると裏から見た時にダイヤがしっかり見える上、壁面にダイヤのカットが映り込んでキラキラします。

そして初めの写真のリングに裏取りを施して裏から見るとこのような感じになります。
(穴の形状は四角ではなく木の葉型に抜いております)リングの裏側(裏取り)
しっかりと撮影しますとこのように見ていただけます。
ハーフエタニティring裏側穴の形状は四角に抜く場合もありますし、このような木の葉型に抜くこともあります。
作品に合わせて裏取りの形状は様々で、ジュエリーとしてより美しくなることを目指して施されます。
これらが『裏取り』と呼ばれる技法になります。

ハーフエタニティリングのページはこちら

オートクチュール・エンゲージリングを制作させて頂きました2

アップが遅くなりましたが、完成品はこちらです。

エンゲージリング3146

繊細になり過ぎないようにということで、写真ではわかりづらいですがほんの気持ちだけデザイン画より肩から腕の幅を広くしております。

このようなところは、図面と立体との見え方の違いなどを考慮しながら実際に作りながらイメージに近づけるよう程良いバランスで調整させていただいております。

どのように調整を施すかということで、見え方に大きな違いが出てきます。

長年培ってきたHIROUMIならではの経験と感性です。

エンゲージリング3145

もちろんこのようなパッと見ためにはわかりにくいようなダイヤの留めてある裏側にも、丸い穴を四角く広げる細工(裏取り)をしっかりと施しております。

裏取りA

私共がオリジナルのマリッジリングを作り始めたとき、材質を吟味し手づくりで丁寧に作っているとことを皆様にわかりやすくお伝えするのに、どのような 言葉でお伝えしたらいいのかを考え、それまでジュエリーでは使われていなかった、本来は服飾に対する言葉であった「オートクチュール」を“一点ずつの上質 なお仕立て”という意味を持たせマリッジに冠しました。

エンゲージリングのフルオーダーというと、敷居が高いかもしれませんが想いを込めて世界でただひとりの方に贈られる大切なものです。その想いにふさわしいものをこころを込めて制作させていただいております。

オートクチュールエンゲージリングのオーダーについてのご質問やご相談もお気軽にお近くのHIROUMIお取り扱い店まで、もしくはお近くに取扱店がない場合はコンタクトフォームよりお問い合わせくださいませ。

 

オートクチュール・エンゲージリングを制作させて頂きました1

エンゲージリングデザイン画c

オーダーメイドでエンゲージリングをお作りさせていただきました。

オーダーでのご注文の場合、お店でご相談くださったご希望を元に、まずはこうのようなデザイン画を描かせていただきます。

そして、お客様にご了承いただいた上で、制作に取り掛からせていただきます。

お客様のイメージされているものと、こちらがお客様が伝えられたことから受けったイメージとの違いがないかの確認です。

この時点で「もう少し腕を細く」など、ご遠慮なくご希望をお伝えください。

ご希望を最大限に叶えてこそのオーダーメイドです。

 

今回はお好みの華奢な作りを守りつつ、貧弱にならないように、フルオーダー、手作りならではの細部の丁寧な作りにもこだわっています。

たとえば、
プラチナ950で細く作ってもリングが歪みにくいように地金の配合からこだわり、細部にまで鏡面仕上げを行うことのできるように細分化してパーツを制作し組み立てる。
太い爪をそのまま付けるのではなく、一本一本太い細いの強弱をつけた爪を作る。
細やかなところにまでデザインを施しつくり上げることができるのも一からつくる手づくりならではの醍醐味ではないでしょうか。
(リングの写真は、ダイヤモンドをセットする前の状態です。)

エンゲージ制作中
完成前